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Eー8.長期記憶に残すようにすること


 

長期記憶へのインプット』について解説します


記憶は情報を覚え込み(銘記)、その覚えた情報を忘れないように保持し、さらに保持した記憶を必要に応じで思い出す(想起)ことで完成します。ヒトは忘れる生き物です。如何にして銘記し、保持し、想起するか?ここではそのヒントについてご紹介します。

 


1.銘記                                 


1.共感できるストーリーで話す

”覚えよう”とする気持ちが無ければ、周知したところで聞いた内容は右から左へと流れてしまいます。特に”自分たちには関係が無い”と感じる内容になるほど、その傾向は強まります。従って、当事者意識を持ってもらうためには、共感できるストーリーで話すことが大切になります。

 
【注意事項】
例えば、事故・トラブルが発生した裏には「忙しかった」「人がいなかった」「大丈夫だと思っていた」などの理由があったとします。同じような状況を経験した人は「その気持ち、よくわかる」と納得しますが、経験が無い人は「それって言い訳でしょ」と一蹴されてしまいます。一般的に「あるある」エピソードは、親近感を覚えますが、それは同じ経験を共有化できているからです。従って「あるある」エピソードに近づけて話をすることが必要になります。
 


2.視覚、聴覚、言語で訴える

情報は、視覚や聴覚を通じてインプットされます。覚えやすさは人によって異なり、文字だけで覚えられる人もいれば、言語で伝えられても覚えられない人もいます。新たに制定されるルールは、明文化されていますのですでに言語情報は整っています。また管理者から周知されたのであれば聴覚情報もあると言えます。従って、残る視覚情報を如何にして活用し、効果的に訴えることができるか?それを考えます。

 
【注意事項】
明文化した言語情報を、改めて要約した『概要』として説明するケース、図にして説明するケースが一般的です。最近は自社で実際の風景や作業内容を動画撮影し、それを説明会で放映したり、従業員通路や作業入口に設置したモニターで流すケースもあります。動画の放映には、費用が掛かりますので、低コストの方法としては、写真を撮影し、それを注意ステッカーという形でポスターすることをお薦めします。ステッカーにする際は「黄色枠に黒字」「赤枠に白字」といった警戒色を活用することもできますので、目立つオリジナルのステッカーを作ることもできます。
 


3.覚えやすい内容にする

どのような条件であっても1つのルールですべてをカバーすることが望まれます。しかしながら、加工方法や使用頻度が異なる品目、機械が多数ある場合、必ずしも1つのルールでは規程できないケースもでてきます。その際は、”主ルール”と”(例外の)副ルール”にわけ、さらに”副ルール”の数も増やさないよう材料や器具、方法などの共有化を図っていきます。このように集約することによってルールを単純化することができ、覚えやすい内容にすることができるようになります。

 
【注意事項】
例えば『洗浄』に関するルールを決めてみます。現在「塩素系洗剤」「中性洗剤」「酸性洗剤」「熱湯」の4種類を利用し、「ガラス器具」「アルミ器具」「木製器具」「配管」「床」「設備」「機械」「テーブル」の8か所の洗浄を行っていると仮定します。「塩素系洗剤」は「床」「設備」「機械」「テーブル」の洗浄に、「中性洗剤」は「アルミ器具」「木製器具」に、「酸性洗剤」は「配管」、「熱湯」は「ガラス器具」に使用しています・・・たぶん、覚えられないでしょう。

そこでまず考えることは”主ルール”です。「塩素系洗剤」が4か所に使われていますので、これが”主ルール”になります。残り3種類の洗剤は例外の”副ルール”になりますが、数が多いので集約します。「酸性洗剤」は、誤って塩素系洗剤に混在してしまうと危険ですので、これを止め、今後は「配管」を「熱湯」で洗浄するようにします。また「中性洗剤」は、「アルミ器具」「木製器具」「ガラス器具」のうち、「ガラス器具」以外に使用しています。従って「中性洗剤」は「ガラス以外の器具」に統一します。このように考えると『原則、洗浄はアルカリ洗剤でおこなう。ただし「配管」と「ガラス器具」は「熱湯」で洗浄し、「ガラス」以外の器具は「中性洗剤」で洗浄する』とすれば、覚えやすくなったのではないかと思います。以下に改めてポイントを記載します。

①ルールは”主ルール”と”(例外の)副ルール”に分ける。また”副ルール”はあくまでも例外規定なので2つ以内にする。
②原則は”主ルール”。”副ルール”は例外規定なので、ルールや適用箇所が多くなる時は、いずれかに統一する(材料、器具、方法の共通化)。
 


2.保持                                 


1.注意をひく

無意識下であっても耳や目には様々な情報がはいっています。目立つ看板や繰り返し放映されるCMは無意識的に消費者に覚えてもらうことを狙ったものであり、同様の手法は工場管理にも活用できます(ザイオンス効果)。明記の段階で「”覚えよう”とする気持ちがなければ周知したところで聞いた内容は右から左へと流れてしまう」と解説しましたが、これは1回限りの周知によるものです。無意識下であっても作業者が情報に接触する機会を増やしてあげるようにします。

 
【注意事項】
目立つポスターを掲示したり、定例会のときに読み合わせやスローガンの唱和、指差呼称をお薦めします。
 


2.質問する

定例会や掲示ポスターなどで情報提供しても、それはインプット情報として頭のなかに留めた状態に過ぎません。またスローガン唱和や指差呼称で発声させても、それは意味を解さず反射的な反応(慣れ)になっている可能性もありえます。ほんとうの意味でアウトプットするためには自分の頭のなかを整理して人に伝えることが必要になります。

 
【注意事項】
意識下でアウトプットできる方法としては「質問して回答させること」「知らない人にレクチャーさせること」が考えられます。前者に関しては、日々のチェック時や工場巡視時に質問してみると良いです。後者に関しては、新人教育を行わせると良いです。人に教えるためには自分がしっかり理解することが求められますので、担当になった作業者は、いっそう覚えようとする気持ちが高まることが期待できます。
 


3.想起                                 


1.気づきの機会を与える

「ルールを制定した」ということは、現状管理に何らかの不備があったと考えられます。ルールが習慣化されるとそのルールが当然のこととして振舞われるようになります。一方で、そのルールの制定に至った経緯については語られることが少ないため「なぜこのルールを運用しているのか?」、時間が経つにつれ、そのことを知らない作業者が増えていきます。従って、改めて制定に至った経緯までを思い出す機会を提供し、風化させないことが必要になります。

 
【注意事項】
気づきの機会を与える方法としては、「定期的に振り返ること」「類似条件が訪れた際に指導すること」があります。前者は、事故・トラブルが発生した1年後を記念日として再確認する場とすること、後者は、例えば雪道で事故が発生したのであれば、冬が始まる前、久しぶりの製造(シーズン製造)での事故であれば、その製品が製造される前に再確認します。
 


2.メモをとる

先の予定は忘れやすいです。「1回/年の頻度で実施している業務」でさえ忘れてしまうことがあります。作業者に気づきの機会を提供しようと計画しても、実施するタイミングを忘れてしまっては意味がありません。そのためには管理者自身がそのイベントを忘れないように覚えておくことが必要になります。

 
【注意事項】
原始的な方法としては年間スケジュールを策定し、そのスケジュール表を目に見える場所に置いておきます。近年は、とても便利な世の中になりました。パソコンのアラーム機能を活用し、通知が届くようにしておけば、イベントが近づくと自動的にお知らせしてくれます。
 


 
 


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