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Bー6.キャッシュフロー計算書


 

『キャッシュフロー計算書』について解説します


キャッシュフロー計算書はお金(現金、現金同等物)の流れを見える化した財務諸表の一つになります。企業のお金の増減を表し「健全性」を把握することができるようになります。

 


1.キャッシュフロー計算書                        


損益計算書は一定ルールに則った数字の羅列に基づいて収益状況を見える化したものであり、実際のお金の流れを表したものではありません。ゆえに黒字であってもお金が増えずに商品や原材料、施設や機械などの”資産”に姿を変えることがあります。キャッシュフロー計算書は実際のお金の流れを表したものになります。お金の流れを把握することは非常に重要であり、例えば1億円の家を保有していても、自由に使えるお金がなければ支払いすることができなくなります。場合によっては経営(生活)が成り立たなくなり、黒字倒産(自己破産)する危険性もでてきます。


キャッシュフロー計算書は、事業によるもの(営業キャッシュフロー)、固定資産の取得など投資によるもの(投資キャッシュフロー)、借入金など資金調達によるもの(財務キャッシュフロー)の3つで構成されます。



営業キャッシュフロー

商品の仕入れや経費などで出ていくお金」と「商品やサービスの提供で入ってくるお金」との差額を表します。


事業をしていると”掛け取引”が行われるケースもあります。それは現金化予定(支払い予定)の権利(義務)であって現時点のお金ではありません。また原材料を加工して商品を製造した際、その原価は販売分のみが計上されることになりますので、すでに購入(支払い)済みの在庫影響を受けることになります。例えば今月、原材料を仕入れなくとも、在庫があればお金を1円も支払わないで商品を製造、提供することもできます。”減価償却費”も同じような考え方に基づいており、すでに購入(支払い)済みの費用を一定ルールに基づいて毎月計上しているため、実際の支払額とは一致しません。つまり損益計算書の営業利益は手元に残っているお金ではなく、理論上の数字を表しているにすぎません。事業に関する貸借対照表上の現金預金に特化し、実際のお金の流れに変換したものが営業活動におけるキャッシュフローになります。


営業キャッシュフローがプラスであれば、本業の稼ぎで手元にお金が残せていることを表しますので、安定的な資金繰りができていることになります。



投資キャッシュフロー

改装や施設設備、機械器具の更新など投資により出ていくお金」と「不要になった資産の売却により入ってくるお金」との差額を表します。


何年間も使用する高額な施設設備や機械器具は耐用年数に基づき減価償却費として資産価値が下がる分を経費処理していますが、実際に経費としてお金が出ているわけではありません(非資金費用)。また不要になった資産を売却した際、手元にはお金が入ってきますが、資産価値より低い金額で売却すると損益計算書上は損失としてマイナス計上されます。つまり投資に関しても損益計算書では理論上の数字が記載されているということになります。投資に関する貸借対照表上の現金預金に特化し、実際のお金の流れに変換したものが投資活動におけるキャッシュフローになります。


投資キャッシュフローがプラスであれば、”投資”で出ていくお金より”売却”で入ってくるお金の方が多く、手元にお金が残っていることを表します。では、プラスにすることが望ましいのか?と言うと、必ずしもそうとは言い切れません。理由は投資を控えているとも言えるからです。投資が消極的になると将来成長を停滞させる要因にも成り兼ねませんので注意が必要になります。



財務キャッシュフロー

借入金や社債など返済により出ていくお金」と「借入金や社債の発行など資金調達により入ってくるお金」との差額を表します。


借入金は損益計算書にはでてきません。当期純利益で残った現金預金から借入金の返済を行うことになります。税金は税引き前当期純利益に対し課税されますので、税引き前当期純利益を減らすことが節税対策になりますが、当期純利益が少なくなると、借入金を返済する原資に影響が出てきますので、過度の節税対策が時として資金ショートの要因になることがあります。資金調達に関する貸借対照表上の現金預金に特化し、実際のお金の流れに変換したものが財務活動におけるキャッシュフローになります。


財務キャッシュフローがプラスであれば、”資金調達"で入ってくるお金が"返済"で出ていくお金より多く、手元にお金が残っていることを表します。では、プラスにすることが望ましいのか?と言うと、必ずしもそうとは言い切れません。理由は借金を抱えている結果であるとも言えるからです。他人資本はいつか返済しなければならないものになりますので注意が必要になります。



2.キャッシュフローの計算                        


キャッシュフロー計算書は損益計算書と貸借対照表を参考に計算します。しかしながら各表の項目は多岐に渡っており、また会社の業種業態や規模により異なります。従って以下の解説においては、わかりやすさを優先し代表的な項目のみで解説します。厳密に言えば不十分なところもありますので、正確な情報は別途、確認していただきますようお願いします。



営業キャッシュフロー

 当期純利益+非資金費用+運転資本の増減

   注)このサイトでは「当期純利益」を

     基準に計算することにします。


 代表的な項目

  ⇨ 非資金費用=減価償却費

    運転資本=売掛金、買掛金、棚卸資産


当期純利益は税金を支払った後に残る利益になりますが、この利益にはお金以外の資産も含まれています。従って営業キャッシュフローを計算するためには、お金のみの利益に変換する必要があります。


まずは「非資金費用」です。非資金費用には減価償却や各種引当金などがありますが、ここでは非資金費用=減価償却費に限定します。減価償却費は実際に現金支出していない経費ですが、損益計算書では貸借対照表上の資産価値を下げるために減算しています。従ってその減算分を戻すために当期純利益に減価償却費を加算します。


次に「運転資本」です。運転資本は営業活動に必要となる資金を意味し『運転資本=売上債権+棚卸資産-仕入債務』で表せます。売上債権には売掛金や受取手形など、仕入債務には買掛金や支払手形などがありますが、ここでは売上債権=売掛金、仕入債務=買掛金に限定します。従って運転資本の増減は、売掛金の増減、棚卸資産の増減、買掛金の増減で計算することになります。


運転資本は損益計算書には出てきません。従って貸借対照表でその増減を確認し、営業利益に加減算していきます。売掛金は売上高には計上(利益として加算)されますが、まだ手元にお金はありませんので売掛金が増加していた場合は当期純利益から減算します。棚卸資産はお金が資産に変わったものであり、その増減が売上原価に反映されます。別の記事でも解説しましたが、棚卸資産が増加すると売上原価は低下します。従って損益計算書にはプラスの影響(利益として加算)が出ますが、実際にはお金が減っていることになりますので、その調整を行うべく、棚卸資産が増加していた場合は当期純利益から減算します。一方、買掛金は支払いを先延ばししている状態なので支払うべき現金は手元にありますが、その増減は売上原価に計上(利益として減算)されています。従って買掛金が増加していた場合は当期純利益に加算します。


(営業キャッシュフローの調整)



以上の具体例を示します。自社がカフェを経営している場合、今期の損益計算書と前期および今期の貸借対照表は下記の通りでした。


(カフェの損益計算書、貸借対照表)


当期純利益は214万円。非資金費用は減価償却144万円。運転資本は売掛金△10万円、棚卸資産△10万円、買掛金△20万円でした。ゆえに営業キャッシュフローは358万円になります(214万円+144万円+10万円+10万円ー20万円)。



投資キャッシュフロー

 -(固定資産の増減+減価償却費)


 代表的な項目

  ⇨ 固定資産の増減

    減価償却費

           

固定資産の増減で計算します。ここで注意が必要なことは減価償却費を加算するということです。例えば期首に500万円の機械を新規取得したと仮定します。減価償却を年間50万円(取得価格の10%)とすると、期末の資産価値は450万円となり、期首に取得した500万円にはなりません。従って減価償却分の50万円を加算しておく必要がありますので、投資キャッシュフローは固定資産の増減に減価償却費を加算することになります。


固定資産が増えるということは、それだけお金が出ていくことになりますのでお金は減っている、また反対に固定資産が減るということは、それだけお金が入ってくることになります。従って最後に固定資産の増減と減価償却費を加算した数字の符号を変える必要があります。


(投資キャッシュフローの調整)


以上の具体例を示します。自社がカフェを経営している場合、今期の損益計算書と前期および今期の貸借対照表は下記の通りでした。


(カフェの損益計算書、貸借対照表)


固定資産の増減は56万円。減価償却費は144万でした。既存の固定資産は資産価値が144万円減っていますが、それは減価償却費で相殺されています。その中で建物が100万円増えていますので、改修(投資)による費用支出があったと考えられます。ゆえに投資キャッシュフローは△200万円になります(-(56万円+144万円))。



財務キャッシュフロー

 短期借入金の増減+長期借入金の増減


 代表的な項目

   ⇨ 借入金の増減(短期、長期借入金)


借入金の増減で計算します。プラスになれば資金調達、マイナスになれば返済したことを表します。


以上の具体例を示します。自社がカフェを経営している場合、今期の損益計算書と前期および今期の貸借対照表は下記の通りでした。


(カフェの損益計算書、貸借対照表)


短期借入金は30万円。長期借入金は△134万円でした。短期借入金と長期借入金の増減を加算するとマイナスになります。これは新たな借入以上に返済でお金が手元から出ていっていることになります。ゆえに財務キャッシュフローは△104万円になります(30万円ー134万円)。



キャッシュの増減

 営業CF+投資CF+財務CF

   注)CF=キャッシュフロー


以上より、営業キャッシュフロー358万円、投資キャッシュフロー△200万円、財務キャッシュフロー△104万円となり、キャッシュの増減額は54万円になります(358万円ー200万円ー104万円)。


キャッシュの増減について検算すると、前期1,300百万円が今期末は1、354万円となり54百万円増加していることが確認できます。


以上をまとめると「本来事業で獲得した現金預金を新たな投資と借入金の返済に回しても54万円の現金預金が手元に残っている」ということを意味します。


(カフェの損益計算書、貸借対照表)


(カフェのウォーターフォールチャート)



3.キャッシュフローの評価指標                      


キャッシュフロー計算書は「営業キャッシュフロー」「投資キャッシュフロー」「財務キャッシュフロー」の3つで構成され、各キャッシュフローの結果はプラスであるかマイナスのいずれかになります。従ってキャッシュフロー計算書のパターンは全部で8通り(2×2×2)あることになり、各パターンでキャッシュフローの健全性を知ることができます。


(キャッシュフロー計算書のパターン)


カフェのキャッシュフローは営業キャッシュフロー358万円、投資キャッシュフロー△200万円、財務キャッシュフロー△104万円でした。この結果を上記パターンで確認すると「営業キャッシュフロー:+、投資キャッシュフロー:-、財務キャッシュフロー:-」ということになりますので、同社はパターン4の一般的な堅実的企業であると言えます。




貸借対照表の解説は以上です。またネタが思いついたら追記します。
 
 


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