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Bー12.ECRS


 

『ECRS』について解説します


ECRSは改善を進める際の4つの考え方(視点)になります。ここではその内容について解説します。

 


1.ECRSについて                           


ECRSは、「Eliminate(排除)」「Combine(結合)」「Rearrange(変更)」「Simplify(簡素化)」の頭文字を取ったものです。まずは「無くせないか?」という視点で考え、次に「一緒にできないか?」「変更できないか?」「簡単にできないか?」という順番で改善を進めていきます。


排除

習慣的に「必要である」と思い込んでいる業務や作業、物そのもの自体を無くすことを考えます。排除により、業務や作業であれば工数がひとつ減ることになりますので、人手や手間がかからなくなる結果、コストと作業性の改善につながります。また物であれば空きスペースが増えることになりますので、保管コストや保管効率の改善につながります。


結合

習慣的に「当たり前」と思い込んでいる業務内容や作業内容、物の管理をひとつにまとめることを考えます。結合により、業務や作業であれば複数の内容をひとつにまとめることになりますので作業効率の改善につながり、また物であれば共有化によるコスト改善につながります。


変更

習慣的に「現状がベストな状態」と思い込み、現状維持を続けている業務内容や作業内容、物の管理を変えていくことを考えます。変更により新たな視点が加わることになりますので改善の糸口につながります。


簡素化

習慣的に「複雑でわかりにくい」業務内容や作業内容、物の管理をシンプルにパターン化や機械化(自働化)していくことを考えます。複雑やわかりにくい状況においてはルールの解釈に誤りが出やすく、時間とともに基本ルールから派生したルールの俗人化が起こりやすくなります。簡素化により素人や未経験者が聞いても理解しやすくなりますので間違いのない行動ができるようになります。



2.進め方                                


務や作業であれば「フロー図」、物であれば「図面」をまずは作成します。細かく作成すると時間ばかりかかりますので、ここでは全体像が把握できる大雑把なものにします。その大雑把なフロー図あるいは図面で問題や課題、改善案が思いつかない時には、さらに細かいフロー図、図面を作成していくという進め方が効果的です。


次にフロー図や図面を俯瞰し、改善できそうなテーマを抽出します。なお優先順位の決め方については別の記事を参照いただければと思います。


テーマを決定した後は、「無くせないか?」「一緒にできないか?」「変更できないか?」「簡単にできないか?」という4つの視点で改善を考えていきます。


具体例として『飲食店』で解説します。


(飲食店 店舗形態によるフロア担当業務の違い)



一般的な飲食店では、顧客入店後、まずは顧客を席へ案内(ステップ1)し、冷水とメニューを提供します(ステップ2)。注文を受けた(ステップ3)後は厨房にオーダー(ステップ4)し、商品ができると、顧客へ提供します(ステップ5)。注文商品に間違いが無ければ伝票をテーブルに置きます(ステップ6)。顧客の食事中も冷水が無くなっていないかチェックし、必要に応じ冷水を提供します(ステップ7)。顧客が食事を終え退店する際は、レジにて会計をします(ステップ8)。顧客が退店した後は、テーブルの食器を片付け、次の顧客を迎えるための準備をします(ステップ9)。


飲食店には様々な形態のお店があります。例えばセルフサービス店や券売機設置店、タッチパネルや配膳ロボットなどを導入し自働化を進めている店があります。


一般的な飲食店では9つのステップがありましたが、セルフサービス店では顧客は好きなところに座り、冷水は自分で用意します。また退店の際は食器を自分で返却口に持っていきます。つまりステップ1,2,7,9がありません。ECRSの「無くせないか?」は、このような改善になります。


一般的な飲食店では会計は退店時に行いますが、券売機設置店では最初に会計を済ませています。またこの時、伝票(請求書)も同時に受け取っていますので一般的な飲食店でのフローと異なります。ECRSの「変更できないか?」は、このような改善になります。券売機設置店では、ほかにも一般的な飲食店と異なっている点があり、席へ案内される際に注文の券を店員に手渡します。つまり案内と同時に注文が終わっている状態であると言えます。ECRSの「一緒にできないか?」は、このような改善になります。


近年はITや人工知能、科学技術の発展に伴い自働化が進んでいます。例えば、注文時のタッチパネルにより、従来、顧客から店員、店員から厨房に伝えられていた情報が、タッチパネルを介して顧客から直接厨房に伝えられるようになりました。これにより注文間違いや注文忘れの心配が無くなりました。また席数が多い店舗では配膳間違いもありましたが、配膳ロボットの導入によりその心配もなくなりました。つまり複雑な作業を無くすことで人為ミスが起こらないようになったと言えます。ECRSの「簡単にできないか?」は、このような改善になります。



企業の場合

あるカフェの今期損益計算書では、人件費率が35%と経費のなかで最も高い割合になっていました。そこでECRSの視点で人件費抑制策を考えてみます。


人件費は土日祝日の繁忙期にアルバイトを雇っていることが要因のひとつになっています。繁忙期を無くすこと(平準化)ができればアルバイトを雇う必要はなくなります。従ってまずは閑散期の平日割、平日しか利用できないクーポン券を発行します。その上で次に、土日祝日に来店する顧客対応を少ないスタッフでも対応できるような施策を考えます。


同店は顧客とのコミュニケーションを大切にしていますので、効率重視で自働化を急速に進めてしまうと顧客とのコミュニケーションが減ってしまうリスクがあります。従ってまずは顧客とのコミュニケーションに関わらないものへの設備投資を行い省人化を進めます。例えば、厨房機器、清掃に対し自動食洗器、ロボット掃除機の導入を検討します。また回数券やプリペイドカード、タッチパネルを導入すれば顧客とのコミュニケーションを保ちながらも注文や会計の手間を減らすこともできます。日々の売上チェックもレジと帳簿を連携させれば、従来別々に行っていた作業もひとつに纏めて処理することができるようになります。


少ないスタッフで店舗を運営すると顧客への商品提供が遅れてしまいます。顧客は待ち時間が長くなるとイライラします。いつもより製造時間を短くして提供する方法も考えられますが、おいしいコーヒーを提供するために手を抜いてしまっては本末転倒です。従って実際の待ち時間を減らすのではなく、”待ち時間を短く感じさせる”ことで感覚的に待っていないと感じさせる施策を考えます。フリーWiFiは待ち時間をストレス無く過ごせる施策のひとつにはなりますが、他店との差別化が図れませんので別の施策も考えます。例えば人は何かに集中すると時間を忘れます。集中するためには、そのものに興味がある必要があります。同社はリピーターが多いことから、店の雰囲気や味に興味があると言えます。従ってこの100年間のエピソード、祖父からの教え、大切にしてきた名言、調度品やBGMのこだわりなど店やレシピについて纏めた小冊子を各テーブルに置いておく、またコーヒー豆について知ってもらうことを目的に、その日に焙煎したコーヒー豆(数種類)をテーブルに置き、自由に利き比べしてもらうようにします。


焙煎作業の時間を変更させることで広告宣伝費の削減を考えます。現在は閉店後に焙煎を行っていますが、この作業を開店前に行うことにより、店舗前を通行する通勤通学者にコーヒーの良い香を感じてもらうことができるようになります。広告において、チラシやテレビ、ラジオなどは味や匂いを伝えることができません。一方、店の前を通る通勤通学者に対しては焙煎作業をするだけで匂いを伝えることができます。しかも毎日、同じ時間に店の前を通ると同じ香を感じることが習慣化しますので、同店を見るとコーヒーの良い香を思い出すようになり、結果として購買意欲を高めることができるようになります。焙煎時間を変えるだけで、作業と宣伝広告を同時に行うことができれば効率的かつ広告宣伝費削減にもつながります。


(ECRSの考え方に基づく改善案)



家庭の場合

A氏(妻、小学生2人の4人家族)の食費率は27%と費用のなかで最も高い金額、割合になっています。食費率を下げる対策として「食べる量を減らす」「安い食材を選ぶ」ということも考えられますが、その施策は生活の質を下げかねません。従って「同じ食材を同じ量だけ使用する」という前提で施策を考えます。また経費に占める水道光熱費の割合が8%ありますので、今回はそこも含めた改善案を考えます。

食材は一度にまとめて買う方が効率的です。平日に仕事や用事で外出する機会があれば、ついでに買い物に行ってしまうことにより、休日にわざわざ買い物に出かける手間を省くことができます。ただし、まとめ買いをした場合、家に帰った後に買ったものを仕分けする手間が発生します。従って買い物中から冷蔵品と常温品、あるいは魚と野菜など、買った後に袋に入れやすくなることを意識しながら買い物カゴに商品を入れ、そしてレジを通った後は予め持ってきた複数枚のマイバッグに商品を仕分けしておけば、家で仕分けする手間を省くことができるようになります。


仮に日々の生活における調理時間を1時間と想定した場合、1週間では調理に7時間をかけていることになります。買い物と同じように調理も一度にまとめて行ってしまうと1週間分のおかずが3時間程度でできるようになります。保管の手間も無くなりますし、食材のムダや水道光熱費の削減にもつながります。調理しないまでも、旬の食材は価格が安いこともありますのでまとめ買いし、下処理だけして冷凍保管すれば旬を過ぎた後でも食材として利用できますのでコスト削減につながります。


コロナ禍以降、スーパーでは惣菜品や冷凍品の売り場が増えてきています。割高にはなりますが、それらを利用すれば調理と片付けをする手間も省くことができます。


(ECRSの考え方に基づく改善案)



価格は需要と供給のバランスで決まります。供給の立場で考えると、野菜や魚などの生鮮食品は旬の時期に供給が高まり、かつ保存期間が短いため価格変動が激しくなります。またスーパーは来店客数の平準化を目的に来店数の少ない平日に価格を下げて販売します。スーパーによってはメーカーとの関係性の深さが価格に反映されますので、このスーパーではA社の商品が安いというケースもあります。一方で需要の立場で考えると、安い時を狙って複数のスーパーに買い物に行っていては、かえって交通費の方が高くなるかもしれません。また安いからと言って買いすぎてしまっては在庫が増えるだけでお金を失いかねません。


従って買い手のメリットだけでなく、売り手の戦略も読むことで、食材を安く買う方法が見つけやすくなります。

 
 


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