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Bー10.損益分岐点売上高


 

『損益分岐点売上高』について解説します


損益分岐点売上高とは利益がプラスでもマイナスでもないときの売上高のことを言います。損益分岐点売上高がわかると、どの程度の売上高があれば利益がでるのか?あるいは目標とする利益を達成するためにはどの程度の売上高が必要であるか?がわかるようになります。ここではその内容について解説します。

 


1.損益分岐点売上高                           


利益は売上高(収益)から費用を減算することで求めることができます。また費用は変動費と固定費の和になりますので、下記の公式が成り立ちます。


(公式1)

利益=売上高ー費用=売上高ー(変動費+固定費)


売上高と変動費は正の相関関係にありますので、”変動費=α×売上高(α<1)”と表現することができます。この式をαについて求めると”α=変動費/売上高”となります。”α”は売上高に対する変動費の割合を意味し、変動費率と言います。


(公式2)変動費=変動費率×売上高

      ⇨ 変動費率α=変動費/売上高


(公式2)を(公式1)に代入すると下記の(公式3)が導けます。


(公式3)

 利益=売上高ー(変動費+固定費)

   =売上高ー(変動費率×売上高+固定費)

   =売上高(1ー変動費率)ー固定費


損益分岐点売上高は利益がプラスでもマイナスでもない時(利益=0)の売上高になりますので、(公式3)から下記の(公式4)が導けます。


(公式4)

 売上高(1ー変動費率)ー固定費=0

損益分岐点売上高=固定費/(1ー変動費率)


(公式4)より、損益分岐点売上高を下げるためには「(分子の)固定費を下げる」あるいは「(分母の)変動費率を下げる」が必要になることがわかります。




(企業の場合)

例えば自社がカフェを経営している場合、「変動費」は売上原価、「固定費」は販売費および一般管理費が該当します。今期の売上高は2、375万円、変動費は775万円、固定費は1,271万円でしたので変動費率と損益分岐点売上高は下記の通り計算できます。

・変動費率α

  775/2,375≒0.326


・損益分岐点売上高

  1,271/(1ー0.326)

 ≒1,887万円



上記の変動費率および損益分岐点売上高と実際の売上高との関係を図示すると下記のグラフになります。


(企業の損益分岐図表)


総費用は固定費と変動費の和になります。総費用の直線の傾きは売上高の直線の傾きに比べかなり緩やかになっています。変動費率が低ければ低いほど傾きは緩やかになりますので、売上高が増えれば増えるだけ利益が増えることになります。一方で固定費の高いと損益分岐点を押し上げる要因になりますので、固定費を下げることが課題と言えます。



(家庭の場合)

例えばA氏(妻、小学生2人の4人家族)の家計簿の場合、「変動費」は食費、「固定費」は生活費が該当します。今期の収入は384万円、食費は102万円、生活費は246万円でしたので変動費率と損益分岐点売上高は下記の通り計算できます。

・変動比率α

  102/384=0.266


・損益分岐点売上高

  246/(1ー0.266)=335万円



上記の変動費率および損益分岐点売上高と実際の売上高との関係を図示すると下記のグラフになります。


(家庭の損益分岐図表)



2.安全余裕率(損益分岐点比率)                     


損益分岐点比率は、実際の売上高に対する損益分岐点売上高の割合を表します。


(公式1)

 損益分岐点比率=損益分岐点売上高/売上高


損益分岐点比率は低ければ低いほど売上高の減少に対する赤字への耐性が強いことを表し、一般的には80%以下を目標にします。


損益分岐点比に類似する指標として安全余裕率があります。安全余裕率、損益分岐点比率とともに”%”で表現され、両者は負の相関関係にあり、以下の公式で表されます。


(公式2)

 安全余裕率

 =(売上高ー損益分岐点売上高)/売上高


安全余裕率は現在の売上高が損益分岐点売上高に対しどれだけ上回っているかを表します。仮に安全余裕率が10%であるならば、現在の売上高が10%以上減少すると赤字に転落することを、また20%であるならば、現在の売上高が20%減少すると赤字に転落することを表します。冒頭で一般的に損益分岐点比率は80%以下を目標にすると解説しましたが、安全余裕率は20%以上になることを目標にします。


(公式2)を損益分岐点売上高について求めると下記になります。

損益分岐点売上高=売上高ー安全余裕率×売上高

        =売上高(1ー安全余裕率)


この式を(公式1)に代入すると、下記の公式が成り立ちます。


(公式3)

損益分岐点比率

   =損益分岐点売上高/売上高

   =売上高(1-安全余裕率)/売上高

   =1ー安全余裕率


損益分岐点比率+安全余裕率=1


損益分岐点比率、安全余裕率はともに”%”で表されます。従って安全余裕率と損益分岐点比率の和は常に100%になります。




(企業の場合)

例えば自社がカフェを経営している場合、今期の売上高は2、375万円、損益分岐点売上高は1,897万円でした。従って損益分岐点比率、安全余裕率は以下の通りになります。

・損益分岐点比率

 1,897/2,375≒0.794

             (79.4%)

・安全余裕率

(2,375-1,897)/2,375

 ≒0.206(20.6%)


(企業の損益分岐図表 ~安全余裕率~)


安全余裕率は20%を超えていますので良好と言えます。




(家庭の場合)

例えばA氏(妻、小学生2人の4人家族)の家計簿の場合、今期の収入は384万円、損益分岐点売上高は335万円でした。従って損益分岐点比率、安全余裕率は以下の通りになります。

・損益分岐点比率

 335/384≒0.872

         (87.2%)

・安全余裕率

(384-335)/384

 ≒0.128(12.8%)


(家庭の損益分岐図表 ~安全余裕率~)


現在は黒字化できていますが12.8%収入が落ちると赤字に転落する危険性があります。安全余裕率20%を確保するためには、「生活費を下げる」「食費を下げる」ことが必要になります。




今回は損益分岐点(利益=0)を基準に安全性を確認しましたが、上記の公式をベースに、利益=0のゼロの数字を変えれば、その利益を確保するために必要な売上高も計算できるようになります。

 
 


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