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Bー4.貸借対照表


 

『貸借対照表』について解説します


貸借対照表は企業における資産と負債、純資産を記した財務諸表の一つになります。企業の財務状況を表し「安全性」が把握できます。家庭では「家計簿」がそれにあたります。ここでは家庭でも活用できる貸借対照表の作成方法について解説します。

 

1.貸借対照表のパターン                         


 資産(-)
・企業
  :資金の運用
   現金やすぐに現金化できるものは流動資産
   すぐに現金化できない施設などは固定資産
(家庭:同上)

 負債(-)
・企業
  :外部からの資金の調達
   すぐに返済しなければならないものは
   流動負債
   長期的に返済しなければならないものは
   固定負債
(家庭:同上)

    

 総資産(-)
・企業:株主からの資金調達
    事業で稼いだこれまでの利益(内部留保)
(家庭:両親からの資金調達、これまでの貯金)


上記のカッコ、家庭の解説は、あくまでもイメージになります(実際にこのような言葉や決まりがあるわけではありません)。損益計算書の記事と同じく、今回の記事も企業の決算書を目にする機会がある人にとっては貸借対照表を私生活に置き換えてみることで理解しやすくなるのではないかとの想いで比較しています。「このような考え方もあるのだなぁ」という温かい目で読んでもらえればと思います。


2.評価指標(代表例)                          


 当座比率
(当座資産/流動負債)✕100%

すぐに返済しなければならない借入金を返済するに足りるだけの現金預金類を保有している状態(100%以上)を目指します。本来は長期借入金の毎月返済もあります。企業、会社員ともに毎月の現金収入が安定していれば問題ないのですが、仮に赤字が続いた、あるいは会社を辞めたなどパタッと収入が途絶えた場合でも毎月返済しなければならない借入金が返済できるだけの現金預金を保有しておくことが必要です。


 固定比率
(固定資産/純資産)✕100%

返済義務のない純資産で固定資産が賄える状態(100%以下)を目指します。固定資産は将来投資の意味もあり、消極的になると成長を止めてしまう危険性もありますが、一方で投資しすぎることで資金繰りを悪化させる原因にもなります。「身の丈に合った投資」を心掛けるためにも、借入金にばかり頼らないことが必要です。



 総資本借入金比率
(負債/総資産)✕100%

借入割合の低い状態(50%以下)を目指します。借入金は返済しなければならない資金です。総資産は負債と純資産を加算したものです。負債が純資産を超えるということは総資産の半分以上を借入金で賄っていることになります。従って保有資産は借入金で賄われていることになりますので、借入金を下げることが必要です。



3.貸借対照表について                          


(企業の場合)

例えば自社がカフェを経営している場合、貸借対照表は下記になります。

( 企業の貸借対照表 ~開業当時~ )

( 企業の貸借対照表 ~今年~ )


カフェは祖父が100年前に住宅街の一画、50坪の土地に15坪の店舗を自己資金500万円、銀行からの借入2,000万円を元手に、運転資金350万円、土地・建物1,400万円、厨房機器450万円、什器や調度品などの器具備品類300万円の合計2,500万円で開業しました。


時は流れ、祖父の代から3世代引き継がれたカフェは、リピーターや新規顧客が獲得でき、毎年黒字が維持できています。資本金は変わっていませんが、今月は41万円の当期純利益が獲得でき、純資産は2,141万円まで増加した一方、借入金は2,000万円から1,356万円まで減少しました(開業当時△644万円)。現金預金は1,331万円(開業当時+981万円)。建物は建設時の支払い(減価償却)は終わっていましたが、利便性を高めることを目的に定期的にリフォームしてきたこともあり現在947万円の資産価値が残っています。また厨房機器や車両の購入・更新で各々約230万円の資産もあります。結果、今月の総資産は3,497万円(開業当時+997万円)となっています。


評価指標で示すと下記になります。


(企業の評価指標)

開業時は、開業費用ほか運転資金もありませんので、ほぼ借入金でスタートしています。その後、事業を順調に展開した結果、現金預金は短期借入金よりも多く残っていますので、収入がパタッと止まっても返済は可能な状態です。また固定費も自己資本内で行っていること、借入金の割合が低いことから、仮に資金繰りが悪化し、全ての固定資産を売却することになっても手元に現金預金を残すことが可能な状態です。開業時と現在の各指標の差をみるといずれもマイナス(改善)になっていますので、良好な経営状況にあると言えます。



(家庭の場合)

例えばA氏(妻、小学生2人の4人家族)の家計簿を貸借対照表に置き換えると下記になります。

(家庭の貸借対照表)


A氏は、結婚時に両親から300万円の祝儀をもらいました。その他、独身時代の貯金もありましたので、それらで家具や家電、車両を購入しました。家具や家電、車両は経年劣化していきます。ローン、毎月のクレジット払いなどの借入を活用し、壊れた家電の買い替え、新たな家電や車両の購入などを行った結果、固定資産は375万円になりました。他にも現金預金やポイント、食材や備品類などの在庫が375万円ありますので、A氏の総資産は現時点で750万円となっています。


評価指標で示すと下記になります。


(家庭の評価指標イメージ)

短期借入金はクレジットカードの利用によるものですが、預金貯金を超えるほど利用していませんので問題ありません。長期借入金はローンで家電や車両を購入したことによるものですが、万が一の時でも、それらを売却することで返済できる(そもそも現金預金を超えた借入をしていないので現在保有している現金預金での返済が可能)状態と言えますので、良好な家計状況にあると言えます。



4.当期純利益と現金預金について                     


上記で解説した”企業の場合”をご覧ください。開業当時の”現金預金”は350万円でしたが、現在は2,120万円となり、1,770万円増加しました。一方で純資産の”利益剰余金”と”当期純利益”の合計は2,650万円でした。開業時の利益はありませんでしたので、この100年間で2,650万円増加したことになります。ここで1点、”利益剰余金”と”当期純利益”の合計は”現金預金”よりも880万円高くなっていることにお気づきでしょうか。一体、事業で儲けた利益880万円はどこに消えたのでしょうか?

当期純利益は損益計算書から導きます。別の記事で解説しましたが、損益計算書は一定ルールに則った数字の羅列であり、自由に使えるお金の流れを表しているものではありません。利益は”現金預金”という資産になったり、”棚卸資産(在庫)”や”建物”という資産になります。従って開業時からの”利益”と”現金預金”の差額880万円は、””現金預金”とは別の資産に姿を変えて残っているということになります。


(当期純利益の資産分配イメージ)




次回は、具体的な事例について解説します。
 
 



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