top of page

改善活動が進まない・・・


別の記事にて「ルール(基準)が守られない要因は、ヒトだけの問題ではありません。企業の問題になります。」と記載しました。

企業の問題のひとつに『利益第一主義』があります。


企業は慈善事業を行っているわけではありませんので、利益を求めること自体は当然の権利と言えます。しかしながら、あまりに利益を優先させすぎてしまうと社内に歪が生じ、持続的に企業活動できなくなる危険性がでてきます。その理由は、利益を優先させることで本業が優先され、間接業務が後回しにされるようになることがあるからです。


その結果、「管理業務ができない」「効率重視で心の余裕が無くなる」と言った問題が発生するようになります。前者は教育指導や改善活動も含みますので、教育指導が疎かになると従業員の「意識が低い」「レベルが低い」「マンネリ化」などの弊害が発生し、改善活動が進まないと「リスクの残存」「非効率化(旧態依然)」などの弊害が発生します。また後者は、人との繋がりが希薄になることを意味しますので、人と人との関係性に関し、「コミュニケーション不足」「ルール違反」などの弊害が発生します。



利益を最優先することによって、「投資が抑制される」ことも起こり得ます。尤も、DX化や最新設備の導入で利益が期待できるのであれば投資も積極的になりますが、維持管理や設備機械の取り換えなど、利益が発生しない投資に対しては、固定費(減価償却費)の増加につながるため消極的になります。


そもそも減価償却費は投資費用を複数年に配賦して支払ったかたちになりますので、償却費がゼロになっている状態は言わば「タダで商売できている」状態と言えます。例えば100万円の機械を購入(償却期間10年、償却費8.5万円/月)し、500円/杯のコーヒーを月間1,000人に販売している店舗があったとすると、85円/杯は、償却費に消えていることになりますが、償却期間が経過した後は店主の儲けに変わります。


本来、償却期間は耐用年数に基づいて設定されますので、償却期間が過ぎた頃は、新たな設備投資や維持管理のための修繕費としてこれまで費やしてきた償却費同等の支出があるはずですが、そのまま使えるケースも往々にしてあります。償却費がゼロになり、”85円/杯の利益”を当然のこととして商売を続けていくと、機械が古くなって新たに買い換えないといけない時期がきても、新たな投資によって発生する”償却費85円/杯”を損していると錯覚するようになります。つまり500円のうち、85円/杯は”償却費分”として価格設定していたはずが、償却期間が過ぎた後は、”利益分”に変わってしまうため、あたかも85円/杯の損が発生していると誤認するようになり、維持管理のための利益を発生させない投資は消極的になります。


ちなみに、これは人の投資でも同じことが言えます。例えば5人の部署で1名が非正規社員、4名が社員(うち2名が管理職)の職場があり、業務割合は本来業務:間接業務=8:2で誰かが急に休んでも対応できる体制の部署があったとします。その体制を変え、非正規社員を3名、社員2名(うち1名が管理職)に変更し、業務割合を本来業務:間接業務=9:1にすると、どうなるでしょうか?


当然ながら役割分担が代わる分、1人あたりの負担は増え、自分の本来業務をこなすことで精いっぱいになります。また、お互いの業務がフォローしきれなくなりますので、休み難い状況にもなります。しかしながらその一方で人件費削減と言うメリットが生まれます。仮に給与を非正規社員15万円、社員20万円、管理職30万円とすると、支払い賃金は前者が115万円/月、後者が95万円/月になりますので、体制変更により20万円/月のコストカットが可能になります。


つまり、「間接業務(≒従業員の成長、モチベーション)」と「人件費のコストカット」はトレードオフの関係にあると言え、間接業務の意義をコストカット以下の価値とみなすことの是非が問われることになります。


残念ながら間接業務の恩恵は、人件費のコストカットと異なり、なかなか数値化できるものではありません。経営層の立場では「目に見える効果」という意味で人件費のコストカットを優先するのは当然のことと言えます。従って、1回でも人件費削減した体制でチーム運営できたのであれば、そのチームにそれ以上の投資をしようとは思わなくなります。


しかしながら、信頼や個人の成長、モチベーションは将来において結果がでてくるもの(ゆえに、人的投資と呼ばれる)になります。言い換えると、「本来業務+間接業務」をこなせていた人的資源が、コストカットによる人件費削減分と引き換えに「本来業務のみ」をこなせる人的資源になる、つまり魅力が半減していると言えます。


これはサービスでも同じケースが起こり得ます。例えば、商品力が高い会社において「顧客はモノに価値を持っている」と判断している経営者は、「顧客はモノに価値を持っているのだから、今のサービスを停止しても引き続き買ってくれるはずだ」と考えます。しかしながら、実際にこれまで行っていたサービスを止めた結果、当初はサービスに費やしていた分の利益は上がりましたが、徐々に売上高が減ってしまうことがあります。つまり、仮に商品力が高かったとしても、これまで「商品+サービス」を当然と思っていた顧客からすると、サービスが無くなり、「商品のみ」になってしまったことで魅力を感じなくなることを読めなかった結果と言えます。


少し脱線しましたが、要するに、投資が抑制されることで「リスクの残存」「人材(管理者)不足」と言う弊害が発生します。


これらを図示すると、概ね下記になります。

(利益第一主義による弊害)



上記に基づき、各経営資源ごとの問題点と改善の方向性を考えてみました。

(改善活動を進める上での方向性)


各問題は、”ヒトで対応できるもの”と”ヒトだけでは対応しきれないもの”があることを改めて理解いただけたと思います。また、”ヒトで対応できるもの”についても、その原動力になっているのは、”企業に対する貢献意欲”になりますので、この会社で働きたいという想い、モチベーションを高めることが必要になってきます。


管理者のなかには、改善が進まないと悩んでいる方も多くいらっしゃると思います。どうか思いつめないでください。それはあなたのせいではなく、会社のせいかもしれません。まずはできること、そこをしっかりやっていきましょう!

Comments


Yアカデミー

©2023 Yアカデミー

bottom of page