
別の記事にて、リスクアセスメントについてご紹介しました。「食品安全、労働安全は難しい」との声を頻繁に耳にしますが、難しいところは専門的な知識であって、アプローチ方法自体は難しくありません。目的とリスクが異なるだけで、どちらも同じ「PDCAサイクルを回す」ことが成功の秘訣になります。

【ステップ1】テーマの選定
まずはテーマを決めます。生産に関するものであればPQCDSME(生産性、品質、コスト、納期、安全、モラル、環境)、販売に関するものであれば4P(商品、価格、宣伝、場所/チャネル)や3C(自社、他社、顧客)など、フレームワークをベースにテーマを決めると良いです。
【ステップ2】情報収集
テーマを決めた後は分析対象で考えられ得る全てのハザード(リスク)に関する情報を収集します。情報源としては、ネットや書籍を参考にします。なおネットでは信憑性が極めて重要になります。根拠として採用する上では信頼性の高い行政機関や大学関連のHPで公開されている情報を入手すると良いです。
【ステップ3】現状分析
自身の生活や成果物を生み出すまでの流れを整理します。その上でステップ2で集めたハザード(リスク)が自身の生活や成果物を生み出すまでの各段階に該当するか否か照合していきます。照合作業を続けていくと、”考えようによっては該当する・・・”、”こういうケースでは該当する・・・”など判断に迷うケースがでてきます。従って、まずは感覚的にザっと判断し、その後、しばらく時間を置いてから改めて再検討するようにします。時間を置く理由は思考を一旦リセットさせるためです。このように検討することで思考に柔軟性が生まれ、集中して考えていた時には気が付かなかった抜けや漏れを見つける、あるいは新たな発想が生まれることもありますので、そのような進め方をすると良いです。
【ステップ4】危害分析
ステップ3で該当した場合は、それらリスクに対する改善策を策定し、実施します。改善案に正解はありませんので、ネット検索し、公開されている好事例を参考にすると良いです。
以上、ステップ1~4までがPDCAサイクルの『P(計画)』になります。
よくある失敗例は「実施に至らない」です。
主要因は計画書が画餅になっていたり、計画書を作ることが目的になっていることによります。計画書は非常に大切なものになりますので熟考が必要になります。しかしながら熟考の結果、時として実現性に乏しい、あるいは別のリスクが発生する、期待効果が低いなど空論の計画になってしまうことがよくあります。また熟考しすぎると時として、計画書を作成すること自体が目的になってしまうこともあります(手段の目的化)。計画を立てる際のポイントは「実現可能性」「実施することで新たに発生するリスク」「期待効果」です。そのポイントを抑えることが大切であり、完璧に仕上げる必要はありません。あくまでも期間を決めて、その期間内に計画書を仕上げる。仕上がりは完璧ではなく、蓋然性を目標に取り掛かることをお薦めします。
計画を作成した後は『D(実施)』に移ります。
よくある失敗例は「そもそも実施しない」です。
主要因は習慣化できていないことによります。人は変化を厭う傾向がありますので習慣化には時間が掛かりますし、一度聞いたあるいは実施しただけではすぐに忘れてしまいます。まずは普段から意識して少しずつ変化を受け入れ、行動を変えていくことが必要になります。そのためには計画書(作業標準書)を目につく場所に掲示したり、頻繁に読み返す、あるいは誰かに実施内容を宣言しておけば、その人から「そういえば・・・」と話を振ってくることもあります。思い出せる環境を予め整えておくことをお薦めします。
実施した後は『C(チェック)』『A(再実施)』します。
よくある失敗例は「チェックしない」です(チェックしなければ再実施もできません)。
主要因は一連の流れを理解していないことによります。教科書的には”定期的にチェックしましょう”と言われますが、そもそもチェックとは何をすれば良いのかがわからないのではないでしょうか?また1年に1回チェックしたところで「この1年間トラブルが無かったので、いまのままで大丈夫だろう」という意識が働いてしまうと形だけの見直しになってしまいます。そこでお薦めしたいことは「気が付いた段階でチェックする」という習慣を身につけることです。誰しも日常生活においてトラブルの発生やヒヤリと焦った経験をしたことがあるのではないでしょうか。その時に「大きなトラブルにならなくて良かった」で終わってしまっていると思いますが、この段階できちんと振り返りを行うことが大切になってきます。『P(計画)』の段階で計画書を完璧に仕上げる必要はないと説明した理由はここにあります。どれだけ慎重になって計画を策定しても事故やトラブルは必ず発生します。従ってトラブルやヒヤリと焦った経験をしたのであれば、以前に作成した計画書(作業標準書)の抜けに確証が得られた訳ですので、そのような体験をした時は必ず計画書(作業標準書)を見直すこと、これがチェックになります。是非とも習慣化させることをお薦めします。
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