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Cー9.リスクの抽出


 

『リスクの抽出』について解説します


「洗い出したすべての工程」に「洗い出したすべてのリスク」を照らし合わせることで自分(自社)に該当するか否か一つずつ抽出していきます。ここではその内容について解説します。

 

1.基本的な考え方                            


まずはリスト化します。リストは縦軸に「洗い出したすべてのリスク」、横軸に「洗い出したすべての工程」を記載し、該当するところに”○”をつけていきます。例えば自社がカフェを経営している場合の食品安全、労働安全、経営は下記になります。


【 食品安全 】

(食品安全リスクの抽出)


コーヒー豆は農場で生産されます。コーヒー豆は自然環境のなかで外界に晒されますので生物学的リスク、物理的リスクのほぼすべてが該当します。化学的リスクに関しては生育段階で使用される薬剤(農薬、殺虫剤、成長剤など)や放射性物質が該当します。


梱包された後は、基本的にコーヒー豆が外界に晒されることはありません。従って輸入や保管、配送においてはほぼリスクが無くなります。しかしながら保管状況によってはカビが生える、あるいはコーヒー豆に付着残存した虫の卵が孵化する可能性があります。それら対策として防虫防腐・防カビ剤が船舶や倉庫、トラック内で散布されれば、外装から箱内に浸透しコーヒー豆に付着する可能性もあります。また船舶や倉庫、トラック内を塗料で塗り替えたばかりの時や生魚や生肉など臭いがきついものと混載されていれば、それら臭いが移る可能性も考えられます。従って輸入や保管、配送においてのリスクは真菌や化学物質が該当することになります。


自社においては、実際にコーヒー豆を加工することで自社商品として販売することになります。コーヒー豆は店舗内(厨房)に晒されますので、自社加工では農場と同じように生物学的リスク、物理的リスクのほぼすべてが該当します。しかしながら店舗内(厨房)は農場のような自然環境とは異なりますので、自然環境で該当した化学的リスクは無くなります。


販売以降は、自社の手を離れ、消費者の取り扱い次第で加工時と同様な生物学的、化学的、物理的リスクが発生する可能性があります。これらは消費者責任になりますが、「コーヒーに入っていた」と思い込んでいる消費者に対し「自社責任でない」と主張したところで、消費者が納得するとは限らず、下手をするとクレーム対応の失敗が経営リスクに繋がる危険性もあります。従って消費者の取り扱いで発生する可能性についても考慮し、事前に対応しておく必要があります。



【 労働安全 】

(労働安全リスクの抽出)


労働安全に関しては、ヒトが介在する限り、どの段階においても発生するリスクがありますが、上流あるいは下流で発生した労働災害の影響が自社におよぶ可能性は低いと考えられますので、ここでは自社以外のリスクは考慮しないことにします。


自社は「コーヒーの加工」を行っておりますので溺れるリスクはありません。また製造環境において交通事故が発生する危険性もありませんので、それらは除外しました。



【 経営 】

(経営リスクの抽出)


経営に関しても、労働安全のリスクと同様に発生するリスクがありますが、自社への影響はありませんので、ここでは自社以外のリスクは考慮しないことにします。なお仕入先の倒産や遅延などについては、自社の”国内トラブル”に纏めて考慮することにします。

自社は住宅街に立地していますので、斜面災害が発生するリスクはありません。また火山は半径100km以内にありませんので、こちらも除外して考えます。



上記は、ページの関係上、流通経路をベースにリスト化するに留めましたが、実際には工程や作業まで落とし込むことをお薦めします。



2.リスクの文章化                            


リストを作成した後は、どのような要因が、どのような理由で発生する可能性があるかを文章化します。ここでもできるだけ”5W1H” ”1文章1動作”で文章化するとよりわかりやすくなりますのでお薦めします。

(リスクの文書化)



上記では”ハザード”と”リスク”に分けて記載しました。厳密に言うとハザードとリスクは異なります。一般的に”ハザード”は危害を及ぼす要因を、”リスク”はハザードが危険に繋がる(と考えられる)理由を意味します。例えば『殺虫剤』は、人体に悪影響を及ぼしますので”ハザード”になりますが、それ自体では即危険と言うわけではありません。実際に虫退治には欠かせませんし、虫害を防止している点では有益であると言えます。しかしながら「殺虫剤を噴霧した野菜を洗わずに食べる」「固形の殺虫剤を塩と間違えて料理に使った」など使い方を一歩間違えると人体に影響が及びます。これがリスクになります。



 
 


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