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Cー8.工程の洗い出し


 

『工程の洗い出し』について解説します


『Aー3.PEST分析』にて、”現状分析する際、まずは「テーマ」を決め、その上でテーマに関する「経路」を把握します"と記載しました。経路は工程とも言い換えることができます。それらを把握することによってモノやヒトの流れが見えるようになり、さらにその流れを細分化することによって各段階におけるリスクが把握しやすくなります。

 

1.モノの流れ                              


例えば自社がカフェを経営している場合、”モノ”を「コーヒー」としてその流れを洗い出すと、自社としてはコーヒー豆を仕入れるところから始まり、消費者に提供することで終わります。しかしながらコーヒー豆は海外で栽培され、商社を介し輸入されますので、上流の流通経路も考える必要があります。また販売以降は消費者で使用・消費され、その後、廃棄されます。つまり消費者の手に渡ってからもコーヒーの流れは続いていますので、下流の流通経路まで考える必要があります。従ってコーヒーの流通経路は概ね下記になります。

(「コーヒー」の流通経路)


次にこの流れをさらに細分化していきます。例えば自社について細分化してみます。自社においては「加工」がメインになります。自社の加工を細分化すると概ね下記になります。

(自社における「コーヒー」の加工)


【自社加工の工程】(上図の黒枠)

加工は、コーヒーの生豆を入荷し検査(納品)するところからスタートします。納品された生豆は倉庫に一時保管した後に順次、焙煎していきます。焙煎したコーヒー豆は自社オリジナルブレンドに配合した後、ミルで粉砕します。粉砕後は酸化防止を目的に真空包装し、冷蔵保管しておきます。そしてお客さんから注文を受けた後に袋を開封し抽出。抽出したコーヒーをお客さんに提供することで一連の工程が終了します。


【工程のステップ】(上図のオレンジ枠)

自社加工の各段階、例えば「焙煎」工程は、倉庫から生豆を運搬するところから始まります。その後、計量した生豆を焙煎機に投入していきます。焙煎が終わった後は放冷し、出来上がりをチェックした後に次の「配合」工程へ移します。



上記はモノの流れを文字で示しましたが、リスクを考える上では図示することもお薦めします。例えば、下記の通りです。

(自社における「コーヒー」の加工工程:図示)


図示することによって、モノの流れが一層理解しやすくなったと思います。



2.ヒトの流れ                              


「コーヒー」はヒトによって製造・提供されます。従ってモノの流れと同様にヒトの流れも把握しておく必要があります。

基本的にはモノの流れと同じですが、ヒトの場合、店舗内においても、あちらこちらへと行き来するため、一定方向に動くとも限りません。また掃除や買い出し、トイレや休憩など必ずしも行動が店舗内だけで完結するわけではありません。店舗内でのヒトの流れを図示すると概ね下記になります。

(自社における「コーヒー」の加工工程:ヒトの流れ図示)



ヒトの流れは、モノの流れよりも複雑になります。

その理由は、ヒトにはモノの流れのような『実際の作業(主作業)』以外にも、”準備”や”片付け”、”調整”などの『付随・付帯作業』と、”休憩”や”食事”、”電話・メール”などの『余力作業』があることによります。ライン化(分業化)された工場であれば、モノの流れに対しヒトは一定箇所の留まりますが、分業化されていない工場になるとモノの流れ同様にヒトも動きますので、工程はモノの流れ以上に多く、複雑になります。


先に示した『自社における「コーヒー」の加工』にヒトの流れを追記すると下記になります。

(自社における「コーヒー」の加工:ヒトの流れ)


【ステップ内の作業内容】(上図の緑枠)

焙煎機は加工に入る前に洗浄し部品を組み立て、使用前点検として試運転し正常に稼働する状態にしておきます。試運転の手順としては、まずは電源をオンにし、暖機運転スイッチを押します。暖機運転の設定時間は5分間とし、異音や振動が無いことを確認します。


さらに、”試運転”の”組み立て”に関しては・・・


という具合に、できる限り各工程やステップ、作業を細分化していくとMECEに近づき、漏れや抜けが無くなります。ちなみにこの内容を纏めたものが「作業標準書」になります。


工程を洗い出した後はリスクの抽出と評価を行うことになりますが、この段階で顕在化したリスクに対しては当然ながら対策を講じていきます。従って作業標準書には単なる作業が記載されているのではなく、リスクを低減させるための方法が記載されているということになります。



3.工程の洗い出しのポイント                       


では、複雑なヒトの動きをどうやって整理すればよいのでしょうか?

お薦めのポイントを4つお伝えします。



1)1日の生活の流れを作成する

まずは自分が朝起きてから、夜寝るまでの1日の流れを把握します。平日と休日で違う、時期によって例外があるなどの事情はありますが、まずは平日について考え、余裕があれば休日や時期による例外についても作成することをお薦めします。

(例:1日の生活の流れ)



2)各動作を「主作業」「付随・付帯作業」

 「余裕作業」の3つに分類する

主作業とは実際に付加価値を生む作業になります。従って「モノの流れ」で示した工程が該当します。一方、各段階で作業する際、事前の準備や後片付けが必ず発生します。これが付随・付帯作業になります。これら作業では付加価値は生まれませんが主作業を行う上では欠かせないものになります。また仕事をする上では、”休憩”や”食事”、”電話・メール””会話(雑談)”なども発生します。これらは余力作業と言い、欠かせないとまでは言えないものの、ヒトの気持ちに余裕を持たせる上では必要な作業になります。


上記で”できる限り各工程やステップ、作業を細分化していく”と記載しましたが、洗い出しには時間と労力がかかります。あれもこれもと深堀りを続けても前に進まない可能性もあります。従ってどこまで細分化を行うべきかは『主体作業 ⇨ 付随・付帯作業 ⇨ 余力作業』の順番で必要に応じ適宜判断することをお薦めします。

(例:動作の分類)



3)分類した各動作を文章化し、

  その内容で作業可能か検討する

例えば『掃除』という動作に関しては、”掃除をする”という文章で表すことができます。しかしながら、この文章には「どこを掃除するのか?」「何を使って掃除するのか?」は記載されていません。仮に場所や方法は問わず、とにかく「掃除をすること」が目的であればこの内容でOKですが、「フロアをきれいな状態に保つこと」が目的であれば不十分です。フロアをきれいな状態に保つための掃除であれば「まずは床面の大きなゴミやホコリなどをホウキで掃く。次に濡れたモップで床面を拭く。最後に乾いた雑巾でモップ掛けした際に広がった汚れを拭き取る」という具体的な実施内容まで記載する必要があります。「この内容でほんとうに作業できるのか?」この視点で文章化を進めていくことをお薦めします。

(例:テーマの文書化)


また文章化する際、複数の動作を1つの文章に纏めてしまうこともあります。例えば「ホウキを持って床面を掃除する」という内容では「ホウキを持つ」と「床面を掃除する」は2つの動作が1つの文章に入っています。できるだけ『1文章1動作』に心掛けることをお薦めします。



4)各動作を必要に応じ具体化させる

3)の文章化と重複しますが「この内容でほんとうに作業ができるのか?」という視点で考えます。一般的に5W1H(いつ・どこで・何を・誰が・どうやって)で説明すると相手にわかりやすく考えを伝えることが可能になります。「小学生かよっ!」とツッコミが届きそうですが、基本動作として習慣化させることをお薦めします。

(例:掃除の手順化)




次回は、リスクの抽出および評価について解説します。
 
 


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