
『検証活動の強化』について解説します
PDCAを回す上での失敗(マンネリ化)は、ほぼ検証が機能していないために発生します。ここでは、検証をうまく進めるためのポイントについてご紹介します。
1.検証を行うしくみをつくる
リスク分析や手順書の作成は、安全活動を実施するうえでの”計画(P)”に過ぎません。各職場では、その計画に沿って対策を”実施(D)”していますが、そこで終わっているケースが多いです。
ほんとうに現在のルール(体制)で問題ないか? あるいは、ルール通りに対策が実施されているか? 対策や手順に無理はないか?など”検証(C)”を行うことが極めて重要になります。
検証手段は様々ありますが、工場巡視もひとつの検証手段になります。工場巡視は定期的に行います。また、実施者は、経営トップ、安全責任者、職場管理者(代理者)による3段階に分けて実施します。このとき、巡視するテーマを決めることが大切になります(漠然と巡視しても時間の無駄です)。例えば、今回の巡視では”ルール順守状況をチェックしよう” ”職場の裏側をチェックしよう” ”終業前の清掃状況をチェックしよう”など、事故・トラブルになりかねない重点課題をテーマを絞ります。またテーマを絞った後は、具体的に何を確認したいかチェックシートを作成します。後述しますが、チェックリストの作成によってデータ化する際の纏まった情報源として活用することができるようになります。
テーマ選定する・・・チェックリストを作成する・・・定期的に巡視する・・・。
このように記載すると、「そんな暇は無い!」と反論されるかもしれません。定期的に実施すると言っても毎日する必要はありません。最低1回/月でも良いですが、それは難しいことでしょうか?
少し考えてみてください。業績は月末に集計し、その結果を知ったうえで、次のアクションを策定していませんか?年間目標計画の達成に向け、月次の業績を確認し、目標未達であれば要因分析し追加対策を講じる。それは検証ですよね。
安全はチェックの暇がないのに、業績はチェックするということは、安全よりも利益を優先しているということになりませんか?
「経営安全第一」を掲げるのであれば、それで良いですが、「品質・労働安全第一」を掲げるのであれば、経営トップ、安全責任者ができない理由はありません。これが安全活動の検証を停滞させている要因のひとつです。
現場は、管理者や経営者を見ています。どんなに立派な安全方針を表明しても、体現していなければ現場もついてきません。是非とも考え方を変えてください。成功はそこから始まります。
【実施内容】ルール順守状況、事故・トラブル発生個所の改善履行状況、危険な行動、5S状況(7S状況)、重点課題、従業員の様子(メンタルケア)など |
【マンネリ化の打破】実施者の刷新(各職場管理者の相互チェック)、実施内容の変更(重点課題の設定)、頻度の変更(通常期1回/月 ⇨繁忙期2回/月)、実施者の育成(他社への工場見学) など |
また、工場巡視はスポット的な検証になりますので、工場巡視ですべてが確認できるわけではありません。一番良く知っている人は実際に日々作業している従業員です。従って、従業員の声(ヒヤリハット)を吸い上げる必要があります。
得意先による工場監査は、指摘を受けると今後の取引に影響する可能性もありますので、現場はピリピリします。一方、組織内で行われる工場巡視は、指摘を受けても大きな影響はないはずですが、経営トップや安全責任者、職場管理者が厳しいと、現場は得意先による工場監査同様にピリピリします。「巡視=指摘=怒られる」と認識すると、現場は隠すようになります。話もしなくなります。
工場巡視は社内の運用管理ルールの検証になりますので、事故・トラブルが発生する前に問題が顕在化することはむしろ良いことです。経営トップや安全管理者、職場管理者は同じ会社で働く仲間です。皆さんの姿勢が現場を動かします。是非ともその点も考慮いただき、巡視では、現場作業者に声を掛け話しやすい環境をつくってください。
2.PDCAサイクルが回る流れをつくる
検証活動は行っているが、それが会議や文書に反映されないケースが良くあります。システムが未成熟だとこのような状況が起こりやすくなります。冒頭、説明しましたが、工場巡視は検証活動のひとつになります。
工場巡視は、あくまでも1回/月に実施した”点”の結果に過ぎません。この”点”を積み重ねただけでは、いつまでたっても”点”でしかなく”線”にはなりません。従って”点”を”線”で結ぶことが必要になります。
検証手段には、工場巡視以外に、検査や事故・トラブル発生状況、得意先からの指摘、現場の意見(ヒヤリハット)など、多数あります。それらも記録として残しただけでは”線”になりません。従って、委員会事務局は、個々の検証結果を入手し、データ化(整理)することが必要になります。そして、検証データから何が読み取れるか検討し、委員会で報告するようにします。その際、事実を伝えるだけではなく、課題解決案も併せて報告するようにします。そのように報告することによって経営トップが判断しやすくなります。
これも勘違いされていることですが、委員会も開催すれば良いというものではありません。各委員に生データを報告したところで、理解はされません。従って、データを纏める、グラフ化する、箇条書きで問題と課題解決案を提示するなどインプット情報を準備します。委員会を通してアウトプットを増やすためには、説明の仕方も重要になってきます。またアウトプット情報は、現行の管理運営ルール(体制)に反映させる必要があります。私の経験でも「事務局は月1回、委員会を開催するだけが仕事」と事務局軽視の傾向がありましたが、委員会の運営次第でインプットとアウトプットの量、すなわち成果が代わってきます。
PDCAが回らない理由は、点で示されたインプット情報と理解できない報告内容からアウトプットが出せないために起こっていると考えられます。委員会を通じて、その流れを良くすることが必要になります。

(PDCAサイクルが回る流れ)
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