
『管理運営ルール(体制)の必要性』について解説します
企業は様々な安全管理を講じなければなりません。安全には、経営(=安定経営)、品質(=品質安全)、食品(=食品安全)、労働(=労働安全)、環境(=環境保全)など様々ありますが、別の記事でも記載した通り、いずれも、まずは現状分析を行い、そのうえで計画(目標設定)⇨実施⇨チェック⇨再実施のPDCAを回すことに変わりはありません。同じ考え方で対処することができます。今回は、安全を確保するために管理運営ルール(体制)が必要であること、管理運営ルール(体制)を策定するために必要なことについてご紹介します。
1.法的要求事項と原理原則
企業は法的要求事項の下、様々な安全管理に努めなければなりません。
例えば、労働安全であれば、従業員が常に安全で働きやすい環境で仕事ができるよう配慮することが求められています(労働安全契約法第5条)。
食品安全であれば、知識及び技術の習得、原材料及び製商品の自主検査、その他必要な措置を講じるよう努めることが求められています(食品衛生法第3条)。
一般的に事故・トラブルは「従業員の不安全な行動」と「職場環境の不安全な状態」が重なったときに発生します。
不安全な行動や状態は、”属人化”と”無秩序”によって引き起こされます。従って『属人化と無秩序を無くすこと』によって事故・トラブルを防止することができると言えます。
”属人化”の反対語は”標準化”、”無秩序”の反対語は”秩序”になります。『属人化と無秩序を無くす』ということは、『標準化と秩序を得る』と言い換えることができます。『標準化と秩序を得る』ということは、つまり『企業として管理運営ルール(体制)を策定すること』に他なりません。
では、そのために企業は何を行わなければならないのでしょうか?
安全は『リスクの発見』と『リスクの排除』で確保することができますので、まずはリスクを発見するためのリスク分析(現状分析)が必要になります。
しかしながら、企業において従業員は、製造であればモノづくり、営業であれば商品の販売など与えられた様々な業務に従事しています。
そのような環境下で、従業員が各々にリスク分析を実施することができるかと言えば、おそらく時間的に難しいのではないでしょうか。
またリスク分析を実施するうえでは、リスクとは何か?を理解する必要があり、そのためにはリスクを発見するための訓練を受け、専門知識を有した人材も必要になります。
場合によっては職場だけでは解決できない問題、例えば安全装置の設置や施設設備の改修などが発生することもあります。
仮にリスク分析が実施できる人材と時間があったとしても、リスク分析の方法、頻度、記録などを決めなければ、職場ごとに様々な意見や同じ工程であってもリスクが異なるなど企業としての統一した管理基準、ルールにならないケースも想定されます。
つまり、それらを纏める担当者や委員会がどうしても必要になります。『企業は管理運営ルール(体制)を策定するために必要な資源を提供』しなければなりません。

2.管理運用ルール(体制)に必要なもの
安全は事業者の責任において進められるものですが、経営トップのみでどうにかなるものではありません。
事業活動に潜む事故・トラブルの”もと”、つまりリスクを見つけ出し、対策を検討していくこと、実行していくことが必要になりますが、それらは各職場担当者が一番よく知っています。同職場全域を管理する職場管理者は職場内のリスクを俯瞰して良く知っています(担当者はリスクを”点”でとらえ、管理者は”線”でとらえている)。
経営トップはそれら現場の意見を聞き入れなければなりませんが、所々から声が挙がっていては、経営トップとしての本来業務に支障をきたす可能性もあります。従って、各職場管理者の意見を集約する場や人が必要になってきます。
それが安全責任者(事務局)や委員会になります。
安全管理は、従業員の協力なくして円滑な推進は期待できません。組織内の役割分担を定め、各役割を担う者が責任を果たしていくことが重要になってきます。参考までに体制について例示します。
経営トップ | トップ自身が安全の重要性を理解し、事業者としての安全方針(安全に対する熱い想い)を全従業員に周知しなければならない |
事務局(安全責任者) | 経営トップの明確な方針指示のもと、各職場管理者に意向を周知しなければならない(各職場管理者の統制、管理運用ルールの最適な運用) |
職場管理者 | 事業所の管理運営ルールや安全計画を理解し、各職場担当者に周知し実践しなければならない(各職場担当者の統制、職場環境の醸成) |
各職場担当者 | 各職場管理者の指示を受け管理運営ルールを遵守しなければならない(安全活動) |
現場を管理する職場管理者や実際に作業を行う職場担当者は、安全に作業するための身体的健康、知識と実践力が必要になります。
またヒトは間違える生き物であるため、教育訓練は当然必要ですが、その他にも間違えを起こさないための仕組み(フールプルーフ)や間違えても事故・トラブルに発展させないための仕組み・職場環境(フェールセーフ)が必要になります。
従って各職場に必要な資源は何か?現場を一番よく理解している職場管理者や担当者が経営トップに要請し、また経営トップは資源を提供していくことが必要になります。
【ヒト】安全教育、資格取得、健康管理、人員 など |
【モノ】機械設備、安全装置、職場環境(騒音や明るさ、温度、湿度、作業スペース など) |
【情報】方針、年間計画、例会、ミーティング、作業手順書、リスクアセスメント評価 など |
【時間】本業以外の時間、5S活動、教育、ミーティング、ヒヤリハット、KY活動 など |
管理運営ルール(体制)は、一度作成して終了ではありません。
変化する内部・外部環境に対し、試行錯誤を繰り返しながら適応(更新)させていくことが必要であり、そのためには、経営トップの指示を受け、活動を統括する事務局(安全責任者)の役割が極めて重要になってきます。
とかく事務局は委員会の開催や意見の集約だけを行う担当者であると誤認されるケースもありますが、システムをマンネリ化させないためには、事務局が現状を見定め、必要に応じてシステムや管理運営ルール(体制)の見直しを図っていくことが望まれます。
【計画(P)】現状分析、リスクアセスメント、手順書、教育訓練、周知、年間スケジュール など |
【実施(D)】例会、職場ミーティング、指導、コミュニケーション、KY活動、5S活動、健康診断 など |
【検証(C)】工場巡視、安全衛生委員会、教育訓練、情報、周知 など |
【再実施(A)】再リスクアセスメント、再作業手順書、再教育訓練、再周知 など |
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