top of page

Aー15.問題の把握(まとめ)


 

『問題の把握』について解説します


前回の記事にて問題把握においてはMECEになるようブレインストーミングで情報を集め、それら情報を包括関係や論理的推論により整理し、最終的にロジカルツリーで体系的に図式化するとの旨、記載しました。問題には顕在的なものと潜在的なものの2種類があります。それらをロジカルツリーで整理することによって問題把握の精度を上げることができるようになります。ここではその方法について解説します。

 
(問題解決のフロー図)


問題を把握する際はSWOT分析で行った「外部環境の脅威」と「内部環境の弱み」を中心に考えると整理しやすくなります。なおSWOT分析の解説時に記載した通り、外部環境の機会と脅威、内部環境の強みと弱みはケースや考え方によって真逆になることもあります。従って問題を把握する際は、外部環境の機会と内部環境の強みにも注意しながら検討することをおすすめします。


1.顕在的な問題                             


現在発生している目に見える問題です。現在抱えている悩みとも言い換えられます。顕在的な問題は自社(自分)で気がついていることもあれば、気がついていないこともあります。気がついていない問題は自社(自分)で意識的に考えるようにしなければ、そのまま気がつかないで問題解決を続けてしまう可能性もありますので一度立ち止まって考え直す、あるいは意図的に視点をズラして考えてみる、また第三者にも確認してもらうなど、できる限り先入観を排除できるよう取り組むことをおすすめします。

別の記事でSWOT分析した『カフェ』について考えてみます。同社は順調な経営を続けていますが現在、下記の悩みがあることがわかりました。
悩み
将来的な不安は無いものの、利益が前年より減少していることがわかりました。従ってまずは「利益が減少している」ということを起点に検討を開始します。利益は「売上高」「総利益(変動比率)」「経費(固定費)」のバランスで決まります。つまり「売上高を増やす」「変動比率を下げる」「固定費を下げる」のいずれかで対策をするしか利益回復の余地はありません。コーヒー豆やエネルギーコストは変動費になりますが、店主はそれら価格が上昇していると話しています。一方で来店客数は増えているとの話がありましたので、利益が減少している主要因は変動費の増加にあると言えます。

(顕在的な問題の把握)

なお今回は店主の話のみで現在の問題を特定しましたが、実際には話の信憑性を検証することや他に利益が減少している要因がないか調べていくことが必要になります。

「コーヒー豆やエネルギーコストの増加」は外部要因による原因になりますが、外部要因が原因であると特定してしまうと「仕方がない」「どうしようもない」と諦めがちになります。従って原因が外部要因にあったとしても自社(自分)にも原因が無いか問い続けることが重要になります。例えば「コーヒー豆の価格が上がっている」という裏に「歩留まりが変わっていない」「購買先が変わっていない」という状況があれば「変わらない」ということが問題であると把握することによって次の課題解決に進みやすくなります。問題解決は、あくまでも自社(自分)にも原因があることを前提に進めていくことが大切になります。

(外部要因が原因であるときのアプローチ)


2.潜在的な問題                             


将来発生するかもしれない目に見えない問題です。将来抱えることになる悩みとも言い換えることができます。自社(自分)で気がついても現在に注力するあまり潜在的な問題への対応が疎かになることは多々あります。いわゆる結論の先延ばしです。潜在的な問題が顕在化してもすぐに対応できるものではありません。従って常日頃から意識しつつ、少しずつでも事前に対応しておくことが大切になります。

別の記事でSWOT分析した『カフェ』について考えてみます。同社は変動費の増加により利益が減少してはいるものの経営に与える影響は小さく、また将来的には落ち着くだろうと予想しており現時点で不安はないと話していました。しかしながらSWOT分析の結果からは外部環境の脅威として「自宅でコーヒーを淹れる消費者が増えていること」や内部環境の弱みとして「秘伝のオリジナルレシピを超える新商品がないこと」「コーヒー以外の事業が展開できないこと」が挙がっていました。これらを鑑みると決して安心できる状態ではないと言えます。理由はいずれカフェでコーヒーを飲む消費者はいなくなるかもしれないですし、近所に大手フランチャイズチェーン店が出店してくるかもしれないからです。

そこでSWOT分析の結果から潜在的な問題として何が該当するか考えてみます。改めて同社のSWOT分析を確認すると下記の通りでした。
外部環境の機会
外部環境の脅威
内部環境の強み
内部環境の弱み
まず「コーヒーブームが到来している」「巣ごもり消費で自宅で淹れる高級コーヒー豆が売れている」という外部環境の機会から「コーヒー人気」というキーワードが掴めます。一方で「コーヒー豆のコストが上がっている」「節約志向でカフェの利用頻度が落ちている」という外部環境の脅威から「節約志向」というキーワードが掴めます。節約志向でカフェの人気が下がりながらもコーヒーブームで高級コーヒー豆が売れている状況を鑑みると「節約のために自宅でコーヒーを飲む機会が増えている(=高級コーヒー豆であってもカフェでコーヒーを飲むより割安)」との仮説を導くことができます。

自社はカフェを経営していますので、自宅でコーヒーを飲む機会が増えることは来店客数の減少につながります。しかしながら現在のところ自社のカフェへの来店客数は減少していませんし、仮に減少に転じたとしても外部環境である消費者の志向を変えることはできません。できることは将来に備え、消費者の志向に合うように自社のカフェを変えていくことです。現在の消費者の志向は「自宅で高級コーヒーを飲むこと」にあります。今後もそのような傾向が続くのならば、同社は消費者ニーズに合っていないことになります。従って「自宅用の高級コーヒー豆を販売していないこと」が同社の潜在的な問題と考えられます。

そのほか「コーヒー豆、エネルギーコストの増加」という外部環境の脅威、「家族で経営しているため、新規採用しても店舗の雰囲気になれない」「秘伝のオリジナルレシピの力が強く、それを超える新商品ができない」「コーヒー以外の事業が展開できない」という内部環境の弱みからも潜在的な問題点は導けますが、長くなりますのでここでは割愛します。

(潜在的な問題の具体例)


3.問題の整理                              


SWOT分析からロジカルツリーで明確となった「顕在的(現在)な問題」と「潜在的(将来)な問題」を一覧化します。

(顕在的ならびに潜在的な問題一覧)

顕在的な問題を解決させることは現在のあるべき姿に戻すこと(改善)、潜在的な問題を解決させることは将来のあるべき姿を目指すこと(戦略)と言えます。顕在的な問題を解決させ現在のあるべき姿に戻すことはSWOT分析の「外部環境の脅威の回避」と「内部環境の弱みの克服」であり、潜在的な問題を解決させ将来のあるべき姿を目指すことはSWOT分析の「外部環境の機会の活用」と「内部環境の強みの発展」になります。

(SWOT分析と問題の把握および改善・戦略の検討との関係)



SWOT分析から導き出した機会の活用と強みの発展については、改善・戦略の検討の記事にて詳しく解説していきます。
 
 


Comments


bottom of page